7月に入ってバリ島は乾季ベストシーズンの到来です。
この時期が近づくと、よく受ける 問い合わせの質問で
「バリ島で有名なマンボウが見てみたいのですが、マンボウ狙いのダイビングって どんな感じですか? 上級者じゃないと難しいですか?」
という質問があります。
このあるある質問に対して、ちゃんとメールで返答しようと思うと、Iphone10回スクロールしても読み切らないボリュームになってしまうので
今回はマンボウ狙いのダイビングとはどんなか?ということについて記事で説明しようと思います。
バリ島のマンボウシーズン
まずは基本のシーズンとその理由からご説明します
バリ島のマンボウは通年を通して出会えるというわけではなく、7月~10月のバリ島が乾季のシーズンにのみ出会うことができます。メインとなるのは8月~9月です。
月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
遭遇率 | × | △ | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
なぜ乾季の季節にだけマンボウがでてくるかというと、その時期に強く吹く 東風の影響で「湧昇」(upwelling)という現象が起きるからなのです。
これは、‘‘深い海の水が浅いところに上がってくる現象‘‘です
普段‐200mほどの深い海にいるマンボウは、この湧昇とともに浅いところに上がってくるんです。
なので、湧昇現象の強く起きる年にはマンボウの遭遇率があがり、湧昇の弱い年には遭遇率が下がることになります。
※湧昇現象の予想に関して、詳しくは以前の記事をご覧ください。
また、マンボウの遭遇率が高い月の中でも
特に、満月 新月の大潮の日から3日間あとくらいが高確率になります。
これは、バリ島のインド洋側では、大潮の日の満潮はAm11:00ほどになるのですが
潮が満潮に近づく時間帯が一番マンボウが出やすいからなのです。
なので、ダイビングボートのスケジュール的に1本目、2本目の時間と、マンボウが見やすい満潮に向かう時間が重なるから高確率になるんですね。
マンボウを当てたいと思えば、この満潮に近づく時間に、ダイビングできるかどうかというのが、まずとても大切なポイントになります。
マンボウに出会えるポイントは
バリ島のダイビングポイントの中で、特にマンボウに出会える確率の高いポイントは、大きく3つあります。
- ぺニダ島 「クリスタルベイ」
- レンボンガン島 「ブルーコーナー」
- テペコン島、ミンパン島
ポイントをざっくり説明すると
3つの中でも、特に上級者向けとされるのが
複雑な流れの中を的確にスポットまで行く必要のある、ブルーコーナーです。
さらにブルーコーナーはタイド(潮の満ち引き)を選ぶポイントで
例えば、干潮に近いときには流れが速すぎて入れません。
かなり敷居の高いポイントになるので、ご希望の方は、事前にお問い合わせをお願いします。
テペコン島、ミンパン島のダイビングもブルーコーナーほどではありませんが、流れの中をぬって進む必要がありますので、ある程度経験を積んだ方にしかおすすめできません。
では、バリ島のマンボウ狙いで一番有名なポイントの、クリスタルベイはどうでしょうか?
ここは‘‘ベイ‘‘という名前の通り、小さな湾になった地形になっています。
この湾内は、7mほどの浅くきれいな砂地が広がっていて、体験ダイビングにもピッタリのポイントです。
つまり、この湾内から出なければ、流れにあたることもなく、どんなレベルの方も安全にダイビングできるのです。
でも、本当にそんなやさしいポイントでマンボウ見られるの?
と思いますよね。
実は今回ちゃんと説明したかったのは、このマンボウ狙いのメインポイント、だれでも入れるヌサペニダ「クリスタルベイ」で
どうやってマンボウ狙うのか、ということなのです
ヌサペニダ クリスタルベイ攻略
クリスタルベイは、インド洋に面したぺニダ島の南、チュニガン島とぺニダ島とのチャンネルの出口付近にある、ビーチが300mほどの小さな湾です
このポイントの海中をエリアごとに大きく分けると、水深5m~12mほどの湾内のエリアと、湾から外に向かって徐々に深くなっていく‘‘スロープ‘‘部分、そして湾の外に出るコーナーからのウォールといった3つのエリアに分けられます。
湾内エリアは、流れもなく、水底には白い砂地が広がって、程よくサンゴもあって、体験ダイビングしたり、ライセンスの講習したりするのにはピッタリのです。エントリーやエキジットもこの湾内から入ると安全です。
そこから、湾の外へ向かっていくと、コーラルとガレの混じった斜面、スロープが続いていきます。
そのスロープを一定の水深(-18mほど)で進んでいくと、湾内から出て120mほど先のところに、潮の当たる(流れのでる)コーナーという場所があります。
そして、主役のマンボウには、このコーナーから先の斜面のどこかで出会えることが多いのです。
マンボウを高確率で当てるには、このコーナーからどれだけ、遠くに出られるか。といったポイントが大切になります。
コーナーから遠ざかるほど、流れにあたるリスクは上がり、帰りの分のエアーも心配になってきます。
ここで、ゲストに求められるのが、エアーの持ちだったり、精神的な落ち着きだったりするわけなのです。
コーナーまでは、ほとんどの場合、経験の浅いオープンウォーターで10本くらいという方でも、お連れできます。
流れにあたるリスクも少なく、深さも問題ありません。
そして運がよければ、このコーナーで待ってさえいれば、マンボウがふらっと現れて、出会えることが良くあります。
ただ、やはりマンボウの遭遇率を上げようと思えば、このコーナーから先に行けば、行くほど、その距離に比例して遭遇率は高くなっていくのです。
そして、この判断こそがマンボウ狙いのダイビングの一番の面白さといっても過言ではないでしょう。
その日のコンデションを冷静に見極め、ゲストの方の経験やエアの持ちを踏まえて、どこまで攻めていけるのか。
マンボウに限らず、大物狙いのダイビングに魅せられる人にとっては、見れるか見れないかわからない、この時間のドキドキそのものが魅力なのです。
マンボウが出る水温と深度
先にお伝えしたように、マンボウは深い海の冷たい海水とともに上がってきます。
マンボウに出会えるかどうかは、この冷たい水がクリスタルベイのどこまで上がってきてるのか。
ということが一番大きな要因となります。
通常マンボウシーズンのクリスタルベイでは、エントリーした浅場で水温24度、これが‐20mのコーナーで水温22度になって、マンボウ遭遇率の高い‐30mでは20度になるといったように、グラデーション状に水温と水深が比例していきます。
経験で言えば、水温22度より下がると、マンボウの遭遇率が急に高くなると思います。
マンボウは深く潜らないと見られない、と思われがちですが、深くいくというよりも、冷水塊という、水が急に冷たくなっているようなところまで行くことが大事です。
逆をいえば、浅い湾内でも水温が冷たいと、マンボウに出会えます。
水面で水温が18度まで下がって、体験ダイビングを連れながら、深度‐5mでマンボウを見たこともあります。
また、深くいっても水温が下がらないので、冷たい水を求めて‐40mまで行かないとマンボウに出会えないといった時もあります。
クリーナーフィッシュを見つけよう
マンボウが冷たい水と共に、浅いところに上がってくるのは、単に迷い込んできてるわけではありません。
マンボウは、クリーニングといってサンゴ礁域にいる中型の魚に体表の掃除をしてもらいに来ているのです。
※マンボウの詳しい生態についてはこちらの記事をどうぞ
では,
どんな魚がマンボウのクリーニングをするかというと、ハタタテダイや、タテジマキンチャクダイなどが有名です。
これもまた大切なポイントなのですが
マンボウを当てようと思えば、クリーニングをする魚がたくさん集まっているような所が高確率なのです。
特にムレハタタテダイが集まっているような場所では、ひしひしとマンボウの独特な気配を感じるものです。
上マンボウ、下マンボウ、流れマンボウ
マンボウに出会う状況には3つのパターンがあります。
一番ゆっくりとマンボウを観察でき、写真を撮ったりできるのは、上記のクリーニングされているマンボウとの遭遇です。
これはもう最上級のラッキーで、マンボウや魚の邪魔をしなければ5分くらいゆっくり見ていられます。
そして、一番よくあるパターンとしては ‘‘流れマンボウ‘‘と言われる、深いほうから ふらーっと現れて、そのままどっかに泳いでいってしまうパターンです。
これは落ち着いてクリーニングできるような場所を探しているか、クリーニングされていたのに、ダイバーに邪魔をされて逃げてきたようなパターンです。
マンボウはとても珍しい生物ですので、これだって十分にうれしい出会いです。
まれにですが
‘‘上マンボウ‘‘という状況の出会いの形もあります。
水深にして10mほどの浅いところを、まるでカメのように、ふらーっと泳いでるマンボウとの遭遇パターンです。
マンボウはたまに、水面に上がってジャンプをしたりするのですが、そんなマンボウと出会うことを ‘‘上マンボウ‘‘といいます。
マンボウ探しの時は、ずっと深いところばっかり見つめていることが多いのですが、そのせいで上マンボウを見過ごすことほど、ガイドとして痛い状況はありません。
マンボウ狙いのマナー
例年、マンボウの時期にはたくさんのダイバーで賑わう、マンボウポイントクリスタルベイですので、マンボウが出た際はダイバーのマナーがとても大切です。
特に、クリーニングされているマンボウと出会えた時です。
念願のマンボウを見つけて、ダイバーとしては大興奮です。その気持ちよくわかります。
ですが、マンボウは深い海からクリーニングを目当てに上がってきて、今やっとリラックスしたところなのです。
例えるなら、仕事で忙しい一日を終えて、やっとの思いで家にたどり着き、ストッキングを脱ぎ捨てて、お風呂に体を浸したばかりの状況なのです。
そんな時に、カメラを構えた見知らぬ中年男性が、脱衣所に現れたらどんな気分になるでしょうか
独身女性であれば、即刻アパートは解約して、最寄り駅沿線にも近づきたくなくなるでしょう。
そう
これから先もマンボウがバリ島に来てくれるためには、このリラックスしたマンボウの邪魔をしないことがとても大切なことなのです。
なので、マンボウと出会えた時はマナーとして、いくつかのお願いをしていますので、どうかご協力よろしくお願いします。
- マンボウに5m以上は近づかない(5mを超えると逃げます)
- マンボウの正面に位置しない
- マンボウに吐いた泡が当たらないように、自分の位置に気を付ける
- クリーニングしてる魚を散らさない(魚が逃げるとマンボウもいなくなります)
- マンボウを追いかけない(早いです、どうせ追いつけません)
自然環境でのアクティビティが、これからも持続可能なものであるためには、ささやかですが大切なことです。どうかご協力をよろしくお願いします。
マンボウ狙いの装備
以上のように、大物を狙う面白さに溢れながらも、シビアな要素も多いマンボウ狙いのダイビング。
マンボウに出会うためには、必要になってくる装備や、あったらいいな というギアも上げておきましょう。
- 5㎜のフルスーツが望ましいです(水温は20度をきることがあります)
- フードベスト(5㎜のスーツよりこれのほうが温かい)
- 推進力のあるフィン(ワープフィンとかベスト)
- グローブ(流れがあるときに岩をつかんで休むことができます)
- Go proには長めの自撮り棒(ストレスを与えずマンボウに近い撮影ができます)
- ダイブコンピューター(深度の管理が大切)
- ボートから離れて浮上したら必要、シグナルフロート
マンボウ攻略のまとめ
長くなりましたが、マンボウ狙いの大切なポイントをまとめておきますね。
- 8月、9月、10月の大潮の日から3日間が高確率
- 水温が冷たいのは嫌だけど、冷たければ冷たいほど高確率
- クリスタルベイではビギナーの方でも出会えるチャンスは十分ある
- でも、もっと確率を上げるためには、より遠く、より深く
- マンボウのクリーニングポイントを見つけよう
最後に
マンボウに見事遭遇できた時のために、マンボウのハンドサインも覚えておいてくださいね!
ではまたー