先日、十何年ぶりに「焼きそば うえだ」をたずねてみました。。
そもそも
バリ島の「焼きそば うえだ」と言われて「あー あれね!懐かしいわね」と思う人が、どのくらいバリに現存しているのかも気になるところでもありますが、タイトルからしてすでに何を言ってるのか意味がわからん。という人も多いと思うので、まずは説明から入りたいと思います。
そもそも「焼きそば うえだ」っていったい
「焼きそば うえだ」はバリ島のタンジュンブノアに以前あった、その名の通りの 焼きそば屋さんでした。
しかし、このお店は、その名のように ’’うえださん” がやっていたお店というわけではなく、あの国民的漫画「ちびまる子ちゃん」の作者、’’さくらももこ” さんがはじめたお店として、一部の人(さくらももこファン)にだけ有名だったのです。
かくゆう僕も、小学校時代の愛読書は「もものかんづめ」と「さるのこしかけ」で、さくらももこの大ファンでした。ぼくの笑いのツボは、この若干ブラックな要素のある、おばちゃん漫画家に作られたといっても過言ではありません。
その、さくらももこエッセイに「焼きそば うえだ」という題名の本があって、内容はこんな感じでした。
さくらももこがメンバーを選んで作った、飲んで ひたすらくだらないバカ話をするだけの「男子の会」という集まりがあり、その中にいじられキャラで幸の薄い”植田さん“というTBSの社員の人がいた。植田さんの外見はドラえもんか、スーパーによくいるおばさんに似ていて、マンションのローンが大変なうえに家族にもバカにされているという。「植田さんそんな人生ならバリ島で焼きそば屋でもやったほうがよっぽど幸せだよー」と言った さくらももこ の一言から、メンバーは10万円づつ出し合って、50万円でバリ島に焼きそば屋を開くことになった という話。
そうして
それが本当に実現されたのが「焼きそば うえだ」なのです。
そこからどうやって開店までこぎつけたのかは、ぜひエッセイを読んでみてください。
お店は「ポンドック アグン 」というゲストハウスの中にあったのですが、ちびまる子ちゃんの描かれた看板が、言われなければわからない、というレベルで地味にに飾ってありました。
僕が行ってたのは、確かバリで働きはじめたばかりの頃だったので、2008年とかじゃなかったかな、ダイビングでヌサドゥアに行くことがよくあったので、まるちゃんの看板を通るたびに「焼きそば うえだ」のいきさつをゲストに語っていたのが懐かしい思い出です。
そんな「焼きそば うえだ」をまた訪ねてみようと思ったのは、Amazonで「焼きそば うえだ」が450円でダウンロードできるようになっているのを知り、(当時は単行本で1600円くらいした)久しぶりにこの完全にくだらないエッセイを読みたくなったからでした。
ちなみにAmazonでの評価は★二つでかなり低く、口コミでも酷評されていました。
たしかに、この本は”さくらももこ”のブラックな要素全開で、完全にふざけていて、1㎜もためにならない本なのですが
例えば、「今日は家に自分しかいなくて、何してもいいもんねー おならプー!」
といった気分の時に読むには最幸の作品なのです。
「焼きそば うえだ」の現在っていったい
まあ こういったいきさつから、十何年の時を経て今「焼きそば うえだ」がどうなっているのか確かめに行こうと思ったのですが
実は、正直なところ一抹の下心もありました…
それはともかく
さすがの僕も今まだ「焼きそば うえだ」が営業していて、あの旨くも不味くもない焼きそばをまた食べようとは思っていません。
というのも、当時から「焼きそば うえだ」は営業しているのか、休みなのかも定かではないようなお店でしたし、明らかに商売的なやる気も感じられませんでした。
なんというか、お化けがでる廃屋とか、名物ババアのいる駄菓子屋とか、そんな類の「特にうちの地元で人に自慢できるような場所ないけど、ここは面白いよ。」くらいの超B級観光地的な認定でした。
バイパスを南下し、タンジュンブノアまで車で走ること30分。
変わらない佇まいで「ポンドックアグン」はまだありました。
しかし、予想通り、あの’’まる子の看板’’はもう無くなっていました。
でも、この変わらない古き良きバリ島感、きっと当時の「焼きそば うえだ」を知っているスタッフがいるはずです。
中に入って、庭掃除をしていたスタッフさんに声をかけてみましたよ
「プルミシー(すみません の意)焼きそば うえだ を探しているんですが、ここで間違いないでしょうか?」
「アドゥ!(インドネシア人が驚いたときに使う言葉)あなた’’ちびまる子ちゃんのヤキソバ’’を探してきたんですか⁉」
「そうなんですよー 昔きた事があって、まだあるかと思って訪ねてみたんですが。」
古参のスタッフさんが言うには、’’焼きそばうえだ’’は、ここのゲストハウスのスタッフが持ち回りで、なんとなーくやっていたそうですが、もう10年ほど前になんとなーくやらなくなってきて、オーナーの方もなんとなーく何も言わなくなり、さくらももこが亡くなったことで、看板もおろしたそうです。
やはり、想像通り。
中学生の恋愛くらい自然消滅的に終わっていったんですね。
さくらももこも、開店するまでが面白かったけど、開店して乾杯した後は、うえださんの焼きそば屋のことなど、どうでもよくなったのでしょう。
むしろ、全然関係ないのにこの’’焼きそばうえだ’’に巻き込まれて、自分のゲストハウスの庭が「焼きそば屋」になってしまった、本にも出てくるポンドックアグンのスイス人オーナーがあわれに思えます。
ある程度のいきさつと、思い出話を古参のスタッフの方と話して
ぼくは実は一番気になっていることを聞いてみました。
「ところで… あれってまだとってあるんですか?」
「おー!あれのことですね、もちろんですよ。お見せしましょう」
古参スタッフ氏がガレージの奥の、余ったベニヤ板や、古びた絵画の中から引っ張り出して見せてくれたのが
こちら
そう、さくらももこ直筆の看板です。
やっぱり!
まだあった
これは内心色めき立ちました
「ちなみに、この看板ってもう使わないなら売っていただけたりしないでしょうか… 」
(しめしめ…この看板の価値がわかってなかったら、1万円くらいで買い取ってGO DIVEの看板をこれにするか、ネットでマニアに売るぞ いや、焼きそば うえだ2号店を出しても面白いし、3万くらいまで出してもほしいぞ )
と考えたのですが
「オー!それはできませんよ、これは私たちにとっての宝ものですから。ちびまる子ちゃんはインドネシアでも人気のアニメですよ。」
と、古参スタッフ氏はぴしゃりでした
(おい、おい、そんな大事ならガレージにベニヤの余りと一緒に置いとくんじゃないよ…)
とは思いましたが、ちゃんとこの看板の価値をわかってくれているようで、なぜかすこしホッとしました。
お宝が見られただけでも、ここまで来た甲斐はあったかなー
そのうちYahooニュースで、「さくらももこ秘蔵のお宝がオークションに!」という記事がでても、僕を疑わないでくださいね。
それではまた!
※「焼きそば うえだ」が気になってしょうがない方はこちらのAmazonからどうぞ。