広く深い海の世界には、まるで宇宙からきた生き物であるかのように、人間の理解を超えた進化を経た生物がたくさん存在します。
そんな数ある海の生き物のなかでも、特にそのフォルムで宇宙を感じさせるような、不思議な生き物がマンタではないでしょうか
泳ぐというより、飛ぶ、滑ると例えたほうがいいような、スムースな動き、液体に近いような体のフォルムと質感
蒼く静かな海の中でのマンタとの遭遇は、まるで星空の夜に自分にしか見えないUFOと出会ってしまったかのような、不思議な感覚を覚えるものです。
バリ島のダイビングのハイライトといえば、マンタ!
と思う人は、世界のダイビング事情に詳しい人でも少ないかもしれませんが
実際バリ島の誇るヌサぺニダの マンタポイントは90%の高確率でマンタやブラックマンタと遭遇できる、世界でも希少な素晴らしいポイントなのです!
今回は、なぜにマンタはそうまで人を惹きつけるのか?
そんなマンタの知られざる生態と魅力に、ぐんぐんせまっていこうと思います。
分類されるマンタ
マンタは分類的にいったら、魚です。
魚の中でも「エイ」の仲間で、そのエイの中の最大の種がマンタです。
マンタという呼び名は英名の「Manta ray (マンタレイ)」からきていて
Mantaとはラテン語でマント、スペイン語で、ブランケットや毛布という意味で、そのあたりのひらひら感から来ているようです。
けっこう最近まで、マンタは1種類だけと思われていたのですが
今まで私たちがマンタと呼んでいたものが、実は2種類に分かれるということがわかって、マンタは2種類!という発表がされました。
現在では、広い海を遠くまで泳いで暮らす、大型で外洋性のマンタを以前からの日本名「オニイトマキエイ」学名(Manta birostris)と呼ぶことになり
私たちがダイビングなどで見る、浅場に定住しているようなマンタ 学名(Manta alfredi) には「ナンヨウマンタ」という中途半端な日本名がつけられることになりました。
このそっくりな2種類こそがマンタです。
ブラックマンタと呼ばれる、漆黒の希少なマンタも存在しています。
これは体色だけが特別にブラックバージョンになってる個体で、種類としては2種類のどちらかです。
大きさは、小ぶりなナンヨウマンタで4m以上になり、外洋性のオニイトマキエイはもっと巨大で6mくらい、最大9mなんて記録もあり、最近ではこの外洋マンタは「ジャイアントマンタ」なんて呼ばれています。
マンタの大きさを表現するのに、よく「4畳半くらい」と言われたりしますが、実際成魚はそれくらいの大きさがあり、水中でみると迫力も相まって、なお大きく感じます。
マンタとモブラ マンタには毒がある?
マンタに近い仲間には、モブラと呼ばれる、「イトマキエイ」や「ヒメイトマキエイ」といった種類もいます。モブラは外見はマンタにそっくりですが、小柄で1m~2mほどです。
よく、マンタの子供と勘違いされますが、モブラとマンタには明確な違いがあって、まず口の位置が違います。
マンタは前に向いて大きな口が開いていますが、モブラの口は小さくて下に向いてついています。
そしてモブラにはエイの特徴である、しっぽの毒針があるのですが、マンタのしっぽには毒針がありません。
エイの最大種であるマンタは、王者の余裕たるものなのか、武器であるはずの毒針を持っていないのです。
巨大に成長するマンタには自然界に天敵が少なく、その進化の過程で毒針は退化していったようです。
マンタの偽物のような立場に立たされるモブラですが
モブラにも魅力があって、それは大群をつくることです。
マンタは多くても10枚~20枚程度ですが、モブラは100枚以上の群れをつくって泳ぐことがあって、そんなモブラの大群を見ることは、ダイビングが好きで世界を巡る人にとって、夢の一つです。
マンタの食性 普段何食べてるの?
マンタは主にプランクトンを食べる穏やかな性格の生物です。
エイの多くは海底に張り付くようにして過ごして、甲殻類や貝を捕食するのに、マンタは海の表層を泳ぎながらその大きな口で海水を取り込み、プランクトンを捕食します。
この食性の違いから、マンタの目・口・鼻は前方に向かって付いている一方で、エイの目は背面に上向きに、口と鼻は腹部で下向きに付いているのです。
マンタはいつも水面近くを泳いでいるというイメージですが。
最近の研究で、マンタは頻繁に水深300mほどの深場まで潜っているということがわかりました。
実はマンタは、300mほどの深場でこっそり魚を食べているらしいという研究結果もあるのです。
ですが、これについては実際に魚食べているのを見たり、胃の内容物を確認したわけでなく、マンタのお肉から成分を考察するとこうだよね、という結果だったので、今のところ証拠不十分で広く信じられてはいません。
マンタの本当の生態って、その知名度の割には案外謎が多いのです。
海の魚の多くがそうなのですが、陸上の動物と違って生活の全部を観察するというわけにいかないので、はっきりしたデータがないんですね。
マンタの生涯
マンタの出産や寿命も、最近になっての水族館での飼育研究の結果で分かってきたことです
マンタは子供を産むときには胎卵性といって、魚なので一応、卵スタートなのですが、卵をお腹の中で孵化させて、見た感じでは人間のようにお腹から赤ちゃんを産みます。
マンタの妊娠期間も人間と同じで10か月ほどもあり、1mほどの立派な大きさの赤ちゃんを、一度に1枚から2枚出産します。 (マンタの数え方は”枚”)
これはほぼ人間の妊娠、出産の感覚に近いですね
マンタの寿命は多くの大型海洋生物と同じで、はっきりわかっていませんが、生まれて5年~10年で大人になり、20年~40年ほど生きるのではと考えられています。
絶滅が危惧されるマンタ
こんな理由から、マンタは生物として簡単に数を増やすことができません。
そして、そこが問題なのですが
マンタは現在、絶滅危惧 危急種に認定されています。これは この先何かあればいつ絶滅に向かってもおかしくないよ。という、75歳以上の年老いた両親 のような立場です。
この原因は、混獲というものです。
なじみのない言葉なので、多くの人は混獲?乱獲じゃないの、思うかもしれません。
混獲というのは、マグロを捕ろうして仕掛けかけたらサメがかかっちゃた、サメ高く売れないしフカヒレだけ切ってあとは海に捨てちゃえ
エビ捕ろうとして、底引き網やってみたら、ほとんど売れないような魚ばっかじゃん!エビだけとってあと海に捨てちゃえよ
みたいなやつで、いわば無駄死にです。
信じがたいかもしれませんが、世界中で漁船に捕られた魚の40%はいらない魚ということで、海に捨てられているのです。
また漁網や、はえ縄(長いロープに釣り針いっぱいついたマグロとるやつ)などの漁具の投棄や放置も大変な問題です。
これに絡ることで、年間30万頭もののクジラ、イルカ、マンタ、カメといった大型海洋生物が無駄死にをしているのです。
そして、この2つの問題の大きな加害者は、漁業後進国(漁業にルールが少ない国)である中国、インドネシア、日本、台湾、韓国、などなのですから、シーシェパードが怒るもの無理はないですが、エビ漁船に関しては、アメリカもひどい状況です。
マンタの知能に迫る
話がマンタからそれていきそうなので戻します。
マンタについて語るうえで欠かすことができないのが、マンタの知能についてです。
マンタはとても知能が高い生物なのではないかと言われています
というのも、マンタは魚類最大の脳をもち、体も大きいですが、脳の割合も大きいのです。
僕の感覚では、マンタは犬ほどに賢いのではと思っています。
実際マンタには社会性があることが知られてきました。
マンタはプランクトンをとるときに、よく5枚ほどが並んで、追っかけっこのように、くるくると回りながら捕食するのですが、当然 先頭で口を開けているマンタが一番たくさんプランクトンを食べられます。
なので、マンタたちは順番に先頭を交代して、不公平をなくす行動をするのです。
マンタたちは友達を作って行動します。
マンタは単体行動も多いですが、グループを作って行動することがよくありますが、これは家族のような血縁関係ではなく、以前にも餌場で一緒になったことがあったり、よく海ですれ違ったりする、顔見知り同士でグループを作るのです。
そして、そのグループで餌を食べに行ったり、ちょっと遠出してみたりして、数週間から1か月ほどすると、そのグループは解散して、また違うグループを作ったりするらしいのです。
まるで入学したばっかりの大学生みたいな感じで「今日学食いってみるけど、一緒にいかない?」くらいのコミュニケーションをとっているのでしょう。
マンタのグループには2パターンあって、1つはオス、メスも関係ない顔見知りグループ。
そして、成熟したメスだけのグループです。
これは、やたらに交尾を求められたりしないために、メス同士で集まって発情するオスに牽制をかけているそうなのです。
この、いわゆる熟女グループ、気持ちはわかりますが、本当にそんな効果があるのでしょうか?
逆効果なのではないかと心配になります。
つまりマンタの魅力とは
つまり、マンタというのは明確に個体識別ができる生き物なのです。
これはだれ君、これはだれちゃんと、みんなわかっているのです。
マンタには、好奇心があり、顔見知りのダイバーには’’なつく’’ことさえあるのです。
僕は海でマンタと出会う時はいつも、指をふってマンタを呼ぶのですが、マンタによってはそれに応えるように、ゆっくりこっちに回って来てくれることがあります。
体の大きなマンタほど、良く反応してくれます
そんな時には、「マンタと目が合った」と感じることがあります
これはとても不思議な感覚で
イルカにもあることですが、向こうがこちらに興味を持っている、というのが感覚として伝わってくるのです。
エヴァンゲリオンでいうと使徒がATフィールドに干渉してくる感じというか、気になってる女の子をこっそり見つめてたら、急に目があって、気持ちがばれたんじゃないかって、ドギマギするような…
例えが偏屈になってしまいましたが
ともかく、マンタと顔見知りになると、何かこう、伝わってる感じがあるもので
地球外生命みたいな見た目のわりに、心が通っているような感覚がもてる、そういう部分こそ、人の心に強い印象を残す理由
マンタの魅力なのではないでしょうか。
バリ島は、そんなマンタに90%の高確率(当社比)で出会える、世界でも希少な素晴らしいポイントがあります。
ぜひ一度は訪れて、マンタと目が合う感覚を知ってみていただけたらと思います。
長くなってしまいましたが、今回はこのへんで
それでは、また!